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磯田道史氏が紐解いた本能寺の変:黒幕背景説

所JAPAN「磯田道史氏が最新の古文書から読み解いた本能寺の変㊙新事実」


『真書太閤記 本能寺焼討之図』(渡辺延一作)

光秀謀反の直接的な契機が「四国:長宗我部と三好の戦い」にあることは、歴史通なら知っていることで、そこに新鮮味はない。

長宗我部を説得していた光秀の苦労が信長の戦略変更によってむげにされたこともよくある話なので、問題にはならない。

そもそも、戦国時代において、「約束を反故にされた、裏切られた」と激怒するような愚かな武将はいないだろう。

戦国時代の軍力の多くは、家臣や同盟者の軍力であり、織田軍10万と言っても、信長が率いた直接の兵力は3万程度と読まれている。

集合離散を常とし、約束や協力より、自分とその部下の命を最優先するのが戦国時代の常識なのだから、「約束を破ったのか」と色めき立つようでは歴史通とはいえない。

磯田道史氏が紐解いた図式はこうである。

1)明智光秀と長宗我部元親の親密性。

これは信長の指示なのだから、光秀が甘い話で元親を説得したことも、元親が光秀と信長に恭順の意志を示したことも、ありふれた謀略戦にすぎない。なので、そこに特別な意味は見いだせない。

例え、古文書に記されていたとしても、それぞれの武将たちの真意を読み取ることはできない。

特に、光秀は「武将は嘘を武略と呼ぶ」という名言を残しているし、フロイスの日本史には「嘘が巧みであることを自慢していた」と記されているのだから、古文書の記述を鵜呑みにするわけにはゆかない。

2)光秀と秀吉の席次争い。

これはあり得そうであり得ない。
圧倒的に秀吉が優勢だからだ。

光秀に特別な才能は見いだせない。光秀は、ただ、信長の信頼において護衛役を任されていただけの、能力的にはごく普通の武将にすぎない。「光秀は有能な武将」とする、その前提自体が間違っている。

光秀に有力な縁者や部下はいない。
ここが光秀にとっての最大の弱点になる。

ここを理解できないで、秀吉と比べるようでは、これまた歴史通とは言い難い。私はそう確信している。

一方、秀吉は豪族である蜂須賀家や生駒家と深い絆を持っていた。さらに、備中高松城の水攻めに際しては、多数の甲賀の土木技術者たちが名を連ねている。

つまり、「秀吉は、正しくは秀吉たちなのだ」という大胆な推理をしたとしても不思議ではないほど、多数の忍びや技術者を配下に収めていた。

秀吉と光秀の実力差は大関と幕下ほどに違う。

光秀は美濃攻めの拠点となった墨俣一夜城を構築できるのか、高松城の水攻めを敢行できるのかなどを考えるとき、光秀と秀吉の差が分かるはずである。よって、(2)の項目は言及するに値しないと断言しておきたい。

3)光秀は関白・近衞前久(このえ さきひさ)と関係を持っていた。

これは事実だろう。
共に、利用価値のある存在と認識していただろう。

その一方で、鵺(ぬえ)のような策謀渦巻く、「他人のふんどしで相撲を取るのを得意とする寄生体公家世界」は一枚岩ではない。当時の公家世界は、近衛派と反近衛派、中立の風見鶏のような集団の三つ巴の混乱状態にあったと考えるべきだろう。

従って、本能寺の変の黒幕などは存在しない。
私の著作にもそう記している。

そして、磯田氏もそう考え、導き出した答えが「黒幕背景説」である。私もこの説を採択している。

磯田氏は、この説を補足するべく「佞人(ねいじん:口先巧みにへつらう、心のよこしまな人)説」を主張している。

新しく見つかった古文書に「佞人」と大書された部分が複数存在していたからである。

つまり、この佞人(公家)が長宗我部のあることないこと、良くない噂を信長に吹き込んだという説である。

信長がそのような胡散臭い人物の助言を聞き入れるだろうか。
彼は、誰の言葉にも耳を貸さない独断主義者だろう。
このような反論は正しい。

ただ、松永久秀に三度も裏切られているように、或いはフロイスが「説得しやすい」と記しているように、信長は意外と猜疑心に乏しく、人を信じやすい面を持っていたことは事実である。

磯田道史氏が導く結論は、「佞人(公家)が信長と光秀に悪知恵を吹き込んで本能寺の変を勃発させた」である。

しかし、この程度の読みでは新事実、新解釈とは言い難い。

なぜなら連歌・愛宕百韻一つで、公家(佞人)の暗躍が存在したであろうことは一目瞭然だからだ。

だから、磯田氏が所JAPANで、「スッキリしない!」と感慨を述べたのは当たり前といえる。

磯田氏以外の所JAPANの出席者は「おお凄い。初めて知った」と興奮していたが、「新たな古文書」という黒幕背景説を後押しする資料の発見は凄いけど、目を見張るほどの成果ではない。このことは、磯田氏自身がよく分かっていることかと思う。

磯田道史先生への提案。
一緒に古事記を解読してみませんか。

核心は、ほぼ解読済みで書籍に記していますが、第一級の歴史家であれば、私が見落としている点にも言及できるかもしれない。

お返事は期待していませんが、「謎解きのプロ、超常のミステリーハンターの私にお声をかけていただければ面白いこともあるかもしれないですよ」と、一応、自己宣伝しておきたいと思います。

 
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